mame3zok雑記

i'm just a drummer. i'm just a rider. i love dogs. i love the greatest japanese rock band SPITZ!

23年前

ちょうどロサンゼルス国際空港に向かうバスの中だった。ラジオで「日本でとんでもない飛行機事故があったらしい」というニュースを聞く。ふぅ〜ん、大変だね、どんな事故なんだろね、ぐらい。詳細は全く判らぬまま、成田行きに乗り込む。機内では新たな情報から遮断され、約9時間のフライトを過ごす。
成田に降り立ち、トランジットの待合室の大画面テレビの映像に釘付けとなる。焼け焦げた山肌、へし折れた木々、立ち込める煙、散乱する破片、遺品らしき物々、そして慌ただしく動き回る救助隊の姿。ヘリコプターで吊るされる少女。大惨事という言葉はこの日のためにある、と延髄で感じた。そして戦慄した。これから自分はN古屋へ、もうひとつ飛ばねばならないのだ。
待合室で驚愕の映像を脳裏に焼き付けた乗客たち。あんな事故は宝くじに当たるぐらいの確率なんだから、とか、たかが小一時間のフライトで大丈夫だとか、これはANA便だから、とか、引き攣る気持ちを分け判らない適当な理由で無理矢理押さえ込んで皆座席で縮込まっている。普段は誰も気にも留めない、離陸前のアテンダントさんのライフジャケット着用の説明を、皆喰い入るように凝視している。近くの席の初老のご婦人が「アタシのライフジャケットが無い!」と座席の下を弄りながらうわずった声でアテンダントを呼んでいる。すっ飛んで来たアテンダントに試着を手伝わせている。膨らみが足りないときの管を咥えてふーふーしちゃったりしている。周囲は、そこまでビビらなくても、と表面は冷笑しつつ、バラバラになった機体の残像を何とか振り払おうと格闘している。誘導路のギャップを車輪が拾うたび、声にならない声がキャビンに満ちる。
そして離陸。飛んでしまえばどうってこと無いんじゃないの、と安堵感が少し広がる。が、ちょっとした気流の乱れにもピリピリする。先ほどのご婦人は、何度も飲み物だ飴だ毛布だとアテンダントさんを呼びつけている。
ベルト着用のサインが灯り、少しずつ高度が下がる。自分の席に縛りつけられ、どうすることも出来ず、ただこの時とばかり神仏に祈り、祖先の霊に縋る。機体が揺れ軋む度に、オーともアーともつかない声が方々から上がる。
見慣れた町並みが窓の外に迫り、いよいよ着陸。

「南無三!」

一瞬、体がシートから浮いた。

と・・・

「どーーん!」

キャビンに悲鳴、怒号が一斉に上がる。が、逆噴射の轟音と共に、確かに機は滑走路を普通に走っている。気が付けば自分の掌は汗でびっしょりだ。機長さんがビビッてたのか、ちょっとした風の悪戯か、着地の瞬間がいつもより多少乱暴で、すとんと降りたようだ。いつの間にかキャビンに安堵の笑顔と拍手が沸き上がっていた。
生と死を分けるもの。紙一重と単純に片付けられるものではないのだが。