mame3zok雑記

i'm just a drummer. i'm just a rider. i love dogs. i love the greatest japanese rock band SPITZ!

台風14号

 の影響で、昼前頃から風が強くなり始めた。電線が轟々と鳴ると、何故か胸がわくわくする。アメリカでも日本でも今年は、大変な被害が出ていて被災者の方々には非常に申し訳ないけど、自分が被災者となった小3の思い出は、けっこう楽しいものだった。
 実家の近くには川が流れていて、普段ならジャブジャブ入ってはザリガニや蛙を捕ったりできる遊び場なのだが、台風や大雨の度に増水しては、溢れそうになった。怖いもの見たさによく、大人に紛れて見に行っては、子供は近づくなと怒られたものだった。土手の幅20mほどを一杯に渦を巻いて流れる、コーヒー牛乳の色をした濁流。普段の優しい景色が一変、荒々しい姿を見せる。盛り上がったり渦を巻いたりしながら、濁った水がどんどん流れ来て、どんどん流れ行く。木っ端やゴミが浮き沈みしながら、見る間に消えて行く。犬か猫の死骸のような物が、波間に一瞬見えたりする。あんなところに落ちたら、絶対浮かんで来れずに溺れ死んで、どこまでも下流に流されて行くんだろうなぁ、などと考えると怖いけど、友達と一緒だと強がって、川面に石を投げたり、自転車で流れを追いかけたりして遊んだものだった。
 夏休みが終わろうとする頃だったと思うが、その日、雨の降りはかなり激しく、大人たちが忙しげに右往左往する様子が不思議だった。消防団の人たちが軽トラで運ばれて来た土の山を、次から次へと白い袋に詰めては堤防の上に並べている。メガホンをつけた車が何やら言いながら、町内を回っていった。道路が冠水し始めると、集まっていた近所の友達の誰からともなく、水の中を自転車で走ると面白いぞ、ということになり、じゃばじゃばざぶざぶと自転車で、雨風をもものとせず、町内の冠水道路を走り回って散々遊んだ。さっきまで家の中で大掃除のようにドタバタしていたオヤジとオフクロが、荷物を持って、さあ行くぞと言う。見ると自分の家の玄関先まで既に水浸しで、だんだん暗くなる中、じゃぶじゃぶと水の中、手を引かれ着いたのは近くの高校だった。近所の人たちも友達も皆来ていて、自分は友達とこんな所で一夜を明かすなんて事、考えもつかなくって嬉しくて、薄暗い廊下を走り回ったり、おにぎりを貰って食べたり、硬い教室の床を毛布に包まってゴロゴロ転げたり、渡り廊下で滝のように落ちる雨水を触ったりして夜遅くまで一緒に遊んだ。
 翌朝には水も引き、雨風も治まり、日も差してきたので、親と一緒に家に戻った。床上30cmだとかで、柱や壁に残った水の痕ははっきりと覚えているが、浸水でぐちゃぐちゃになったはずの家財や、それらの片づけをした記憶は無い。きっと、近所の友達と自転車で町内を走り回っては、台風の爪あとを見つけて遊んでいたのだろう。
 今思えば、当時あのあたりは全戸、汲み取り式トイレだったので、自分たちが自転車でじゃぶじゃぶ走り回っていたあの水には・・・ 嗚呼!