おやすみ

濃霧の夜。こちらに越して来て初めて、霧に包まれた我が家我が街を見る。とても静かな夜。２０m先がぼやけて見えない。十三夜程の月だけが霧を突き抜けて真上に輝いている。日常の汚さを覆い尽くし、見るもの総てを幻想的にする。その霧の中を嫁と犬と歩く。言葉少なに歩く。嫁と手を繋いで歩く。髪もジャケットも犬もしっとりする。何故か、子供の頃見たＮＨＫみんなのうたの「遥かな友に」を思い出す。オルゴールのイントロで始まる、優しい男声四重唱。無性に聴きたい。