今朝、犬が死んでいた。
仕事場に遅刻の連絡を入れ、庭の隅に深く穴を掘り、埋葬した。その上に椿の木を植え、いつもの餌皿に水といつものドッグフードを供えた。
ここ数ヶ月、食が細り、身体も痩せ、具合が悪そうにしてる事もあった。歳も歳だし、こんな日がいずれ来るとは思っていたが、その当日がいきなりやって来た。
もっと可愛がってやれば良かったのに。
もっとやってやれる事があったのに。
最期を看取ってやるべきだったのに。
自責の念。穴を掘りながら、土をかけながら、涙が止まらなかった。目蓋を腫らしたまま仕事場に向かった。
寡黙で忠実な犬だった。自分の犬としての立場をよくわきまえていた。暑さも、寒さも、痛みも、寂しさも全て、主人である俺が話しかけて頭を撫でてもらえるその一瞬のために我慢していたような、我慢というか、一日24時間の大半をただ待っていて、その待つ事が自分の役割であると受け入れているような犬だった。ただ昼寝して、餌もらって、散歩に連れてってもらって、のんきに毎日を送ってただけなのかもしれないけど。
嫁と二人で泣きながら思い出話をした。初めて家に来た日の事、とっ散らかして大変だった事、海へ連れて行った事・・・ きっと、うちの犬で良かったと思っているよ、うちの犬になっていっぱい可愛がってもらった、って。朝から一番気遣ってくれたのは嫁だった。娘たちもそれぞれ驚き悲しんでいたが、それぞれの方法で父親に気遣ってくれた。
今でも、いつもの場所で寝そべっているような気がする。きちんと受け入れるのにはまだ時間がかかるだろう。自責の念も消えない。
「最期を看取ってやれなくてごめんね。うちの犬でいてくれて本当にありがとう。絶対に忘れないよ。」